モノトーンの RENAULT 4、フランスの北西部 ブルターニュの冬のビーチ。
そんな洒落たロケーションだったらとても素敵なんですが、これは寒々しい日本海を背景にした能登での一枚。YくんのオフホワイトのキャトルTL です(ぼくもこのころ ぼろぼろのブルーグレイの GTL を所有していました)。うるしの宿の輪島からの帰路だったと憶えています。
キャトルで行く能登の旅に備え、大阪日本橋のガラクタ屋で手に入れた初代オリンパス PEN。24枚フィルムで48枚も撮れる、かつて流行ったハーフ仕様の旧いカメラです。白黒フィルムを装填して冬の旅の記憶をセンチメンタルに収めるつもりでしたが、さすがに五百円のジャンク品、現像をすると絞りのリングが動作しなかったようで、ほとんどが露出オーヴァー、思い出を写しとったはずの像の何もかもが失われていました。ただ、この海辺のキャトルの写真一枚だけが、なぜか生き残っていました。
そんな不思議な幸運もあり、フィルムらしい繊細な粒子のトーンとコントラスト、広角レンズの余白が気に入って、ポスターをはじめさまざまなカタチでグラフィックの素材として使っていました。どういういきさつかはすっかり忘れてしまいましたが、この写真はオーストリアの作家 Leopold Federmair さんのノベル「Ein Fisch geht an Land」の装幀のイメージとして使われています。主人公がキャトルに乗っている「魚は丘に上がる」という禅語のようなタイトルのドイツ語で書かれたこの物語は、永井宏さんが遺した海辺のノベル「SMILE」ともリンケージする瑞々しい青春小説です。
作者の Federmair さんや熱心な読者のみなさんは、きっといまなおフランス北部のビーチで撮られた写真だと思い続けていることでしょう。時折ぼく自身もそんなふうに錯覚してしまうことがあります。RENAULT 4 のある風景は、ぼくにとってもフランスの面影のひとつであり、フランスの隠喩的な記号になっているのかもしれません。ぼくの乗っていたキャトルと同じブルーグレイの日本海の淡い空の色彩とともに。
そんな洒落たロケーションだったらとても素敵なんですが、これは寒々しい日本海を背景にした能登での一枚。YくんのオフホワイトのキャトルTL です(ぼくもこのころ ぼろぼろのブルーグレイの GTL を所有していました)。うるしの宿の輪島からの帰路だったと憶えています。
キャトルで行く能登の旅に備え、大阪日本橋のガラクタ屋で手に入れた初代オリンパス PEN。24枚フィルムで48枚も撮れる、かつて流行ったハーフ仕様の旧いカメラです。白黒フィルムを装填して冬の旅の記憶をセンチメンタルに収めるつもりでしたが、さすがに五百円のジャンク品、現像をすると絞りのリングが動作しなかったようで、ほとんどが露出オーヴァー、思い出を写しとったはずの像の何もかもが失われていました。ただ、この海辺のキャトルの写真一枚だけが、なぜか生き残っていました。
そんな不思議な幸運もあり、フィルムらしい繊細な粒子のトーンとコントラスト、広角レンズの余白が気に入って、ポスターをはじめさまざまなカタチでグラフィックの素材として使っていました。どういういきさつかはすっかり忘れてしまいましたが、この写真はオーストリアの作家 Leopold Federmair さんのノベル「Ein Fisch geht an Land」の装幀のイメージとして使われています。主人公がキャトルに乗っている「魚は丘に上がる」という禅語のようなタイトルのドイツ語で書かれたこの物語は、永井宏さんが遺した海辺のノベル「SMILE」ともリンケージする瑞々しい青春小説です。
作者の Federmair さんや熱心な読者のみなさんは、きっといまなおフランス北部のビーチで撮られた写真だと思い続けていることでしょう。時折ぼく自身もそんなふうに錯覚してしまうことがあります。RENAULT 4 のある風景は、ぼくにとってもフランスの面影のひとつであり、フランスの隠喩的な記号になっているのかもしれません。ぼくの乗っていたキャトルと同じブルーグレイの日本海の淡い空の色彩とともに。